レンズ超音波洗浄装置とは?特徴や形状の選び方

レンズ超音波洗浄装置は、液体を超音波によって収縮や膨張を繰り返すことで気泡のキャビテーション能力を使って洗浄する装置です。母材に与える影響を限りなく低減させることができる洗浄機です。

レンズなどの透光体の洗浄は、とても難しい作業です。よごれを取ろうと思ったのに、結果として油脂は表面についてしまったり、擦った部分が傷ついてしまったということも考えられます。特に細かな部分は汚れが取れにくくて大変です。レンズ超音波洗浄装置の原理や形状、できることとできないことを知っておくと選定に困ることがなくなります。

レンズ超音波洗浄装置について

レンズ超音波洗浄装置は、超音波を利用して表面についている汚れを剥がすものです。超音波とは人間が聴こえる音よりも高い周波数で発振される波動です。この波動の影響によって液体の中では収縮と膨張が繰り返されます。液体の中には微量な気体が含まれていて、気泡として発生と消滅を繰り返します。この消滅の時に周囲に衝撃を与え、汚れを除去することが可能です。これをキャビテーション現象と言います。液体中の微小な気体の衝撃ぐらいであれば、ガラスやプラスチックの強度を超えることがないので、レンズを傷つけることなく汚れを取り除くことができます。

基本的にレンズ超音波洗浄装置は、水などの液体を利用して洗浄します。レンズ表面が水に浸かっている状態であれば、発生した波動によって全体をきれいにすることが可能です。洗剤などを使うことなく洗浄できるので、耐薬性などを気にしなくても問題ありません。表面の形状に影響されないので、どのようなレンズ形状でも問題ありません。また小さなものでも対応できるので、微小な光学系のものでも対応できます。

もちろん液体を水ではなく、洗浄剤にすることでより効率良く汚れを取り除くこともできます。製造中に付着した油分などはなかなか取れず、光学性能に影響を与えたり、表面のコーティングの仕上がりを悪くする恐れがあります。そのため完全な除去が望まれます。擦って洗うような方法よりも確実に、レンズに優しく汚れを取ることができることがレンズ超音波洗浄装置のメリットの一つです。使用する周波数によって効果のある部材が変わりますが、レンズ洗浄であれば低周波でも十分理代可能です。

レンズ超音波洗浄装置の形状の種類

レンズ超音波洗浄装置の基本的な形状は、発振機と振動子の二つから構成されます。発振機から送られる電気によって振動子が振動します。桶のような金属の水槽に液体を溜めてその中にレンズを入れて洗浄します。水槽に直接振動子を入れるのが投げ込み型と言われるもので、直接液体を振動させて超音波を発生させます。このタイプだと水槽の種類を気にしないでもいいことがメリットとなります。デメリットとしては、投げ込んだ振動子が動いてしまう恐れがあることや場所によって効果にムラができることです。そのためあまり大きな水槽を利用することができません。

最も多く利用されているのが水槽に直接振動子が付いていて、水槽自体を振動させて洗浄するタイプです。この方法だと均一な超音波が水槽全体に発振されるので、どこにあるレンズでも同じようにきれいにすることができます。底面が一体化しているようなものもありますが、その場合は下部から上部に均一な超音波を発生させます。このような形状ではあまり大きな水槽が作れないため小型になるデメリットがあります。大きなレンズを洗浄したい場合には、対応できないので注意が必要です。また水槽がステンレスなどの耐水性のある金属でなければいけません。

大きなレンズを洗浄するような時に利用できるのが、シャワータイプです。あらかじめ超音波によって振動させた水を対象物にかけることで汚れを除去します。流す前に液体に振動子を当てることで超音波がある程度持続します。その間にレンズにかけると、水槽の中と同じ効果が期待できます。洗い流すことになるので、排水ができるところでなければいけません。

レンズ超音波洗浄装置でできること・できないこと

レンズ超音波洗浄装置が他の洗浄装置よりも優れているところは、細かな部分にも働きかけて汚れを浮かすことができることです。液体中に存在する気体はとても小さく、その気泡となれば目に見えないレベルの大きさです。そのような微細なものが表面に付着して、破裂する衝撃で汚れを弾き飛ばしてしまいます。ブラシなど物体と比べるととても小さいため複雑な形状であっても確実に入り込みます。

レンズでも均一な形状ではなく、段がついていたりカーブが異なるような形状があります。そのような時には、擦るような洗浄では力のかかり具合にムラができてしまう恐れがあります。特にカーブの変わるとことなど、隙間ができてしまうような部分には注意が必要です。レンズ超音波洗浄装置ならそのようなところでも十分対応できます。

レンズ超音波洗浄装置を使う時に注意しなければならないことは、傷があると割れてしまう恐れがあるということです。超音波は小さな隙間に入り込むことができるメリットがありますが、傷などの構造的に弱い部分がある時には、そこに入り込んで傷を広げて割ってしまう恐れがあるので注意しましょう。またソフトレンズなどの柔らかい樹脂を洗浄する場合、母材を傷つけてしまう恐れがあります。

異種材料の組み合わせも気をつけた方が良いでしょう。接合部分に入り込んだ気泡がキャビテーションを起こしてはじける時に逃げ場がなくなると、その付近にある母材まで傷つけてしまう恐れがあります。そのため洗浄する時にはできるだけバラして異種材料が組み合わさっていないような状態にした方が安心です。気軽に使ったがために割れてしまう恐れがあります。

失敗しないレンズ超音波洗浄装置の選び方

レンズ超音波洗浄装置を選ぶ時に、まず考えなければならないのが大きさです。振動子がついている水槽の容量がそのまま使えるわけではなく、洗浄位置というものに気をつけなければいけません。しっかりと安定した超音波が届くところは、それほど大きくありません。洗浄効果のある超音波がどのぐらいの範囲で有効なのかを確認しましょう。除去したい汚れによって選ぶことも重要です。目で確認できる埃などの汚れであれば周波数28kHz程度で十分きれいになります。目に見えない大きさの汚れとなると1から3MHzの周波数が必要になります。発振機の中には周波数を変更することができるようなものもあって、母材や汚れの程度についても幅広く対応可能です。

レンズ超音波洗浄装置の選び方としては、まずのような汚れが落ちるか確認することが必要です。媒体として水だけでなく洗浄剤を使うこともあります。このような液体を使うことができれば、頑固な汚れも取り除くことがきますが、排水などの処理が面倒です。環境への影響があるような洗浄剤の場合は、特に注意が必要です。洗浄後に乾燥も必要になるので、その移行のしやすさも気にすべきポイントです。

より確実に汚れを落とすために、水槽にヒーターが付いているものもあります。媒体となる液体が温かくなればそれだけ、洗浄力が高くなります。レンズ超音波洗浄装置の中には水槽を温める機能が付いているものもあります。特に油脂分などはなかなか取れない汚れには効果がありません。例えば50度を超えるようなヒーターがあれば便利ですが、そこまで上がらなくても少しでも高くなることで効果が期待できます。

レンズ超音波洗浄装置は汚れを浮かび上がらせることができるところがメリットです。特に触ることで油脂分がついてしまうようなものには、とても効果的です。液体に触れている部分が全て対象となるとかなり奥の方まで浸透できる洗浄機です。